2005年のタイムカプセル

このブログはまだ全然記事が無いように見えるけど、実はこのURLにて、同じタイトル「猫型飛行船」にて、2005年1月から更新されていた。当時はバックエンドで有料のCocologサービスを使っていて、その後無料版のCocologに移行し、そしてこの7月に戻ってきた、ということになる。

一貫してMovableTypeベースのサービスというかASPのTypePad系を利用してきたのが、ここに来て突然WordPressに乗り換えたのは、現在多くの人がそう考えているだろうことと同じく、この秋にMovableType Open Sourceが終焉してしまうという状況に直面して、潮時と行動を起こした、ということである。

インターネット上には過去のページをアーカイブしてくれているWayback Machineというサービスがあって、そこで猫型飛行船(http://ship.asap.jp)の2005年1月当時の記事を見ることができる。ある種のタイムカプセルです。自分でアーカイブしておくのを怠っていて、そのくせ読めば懐かしいなんて、随分とだらしない奴、そう思われても仕方ない。ここでは、Wayback Engineに感謝の意を表し、その記事を一部(2005年1月30日の記事2件)ここに引用する。

グローカルでいこう

グローカル Glocal = think global, act local 世界規模の視野で考え、草の根レベルの活動の視点に生かす。

どぶ板政治家の先生は(think)local-(act)local。自国の正義を世界に押し付ける超大国は、local-globalのエゴイ スト組。本当はglobal-globalでありたいが、そんなのは一部エリートの世界だし、globalサイコーという米国的プロパガンダに染まった価 値観が背景にある。グローカルは和製造語なのだが、そこには、所詮グローバルなプレーヤーにはなれないけどね、という日本国民の諦め感が染みていて、それ で心の琴線に触れる流行語となったという気もする。失われた10年の停滞と高齢化で社会の活力が低下し、アジアの盟主の座を中国に奪われ、貧富差拡大、治 安悪化、汚職蔓延、かつての英国のような没落感に喘ぐわが国にとって、勇気の湧き出る掛け声が必要だ。いわば、モ娘のラブマシーンのような存在だ。

ここで突然ですが、作者にとって生業の場、ソフトウェア業界にこのグローカル構図をあてはめてみる。

ソフトはみんな、米国発世界標準の技術が支配的で、日の丸企業に国際競争力は無いとされてきた。日本語という障壁が外国勢から市場を守ってきたが、 中国やインドでのオフショア開発に市場を奪われ、ゼネコン型下請け階層末端の弱者から順に淘汰の時代を迎えたといわれる。でも、ソフト関係全体は依然成長 余地豊富な夢のある産業のはずで、単に取り上げられつつあるチーズに恋々としてるだけで、そういう付加価値の無い下請け作業は国際垂直分業体制にとっとと 投げてしまえ、というのが理性の声の発するところ。

では日本には何が残るのか。それがソフトサービスだと考える。インドの技術者と接点があるとわかるのだが、基本ソフトのセンスでは到底彼らと同じ土 俵では戦えない。現在は人海戦術が必要なビジネス系カスタムアプリケーションでも、どっと作るエネルギーの面で、中国人のハングリー精神にまったく勝てな い。だが、ソフトは手段で目的はサービスや機能の実現だ。現在の日本にある多様で多量の細かなサービスのニーズに、中国もインドも豊かになって数年後に直 面する。日本で洗練されてゆく木目細かなサービスは、日本人のもの作りやもてなしのDNAの素直な発露であり、いずれグローバルスタンダードの品質を持つ に至ると考えるのである。

グローカル構図に戻るが、多くのスタートアップ期のベンチャーがlocal-localの領域で糊口をしのぐ悪しき習慣があった。下請けは食えたか らだ。これからは違う。global-localの領域で、小粒でもピリリと辛い山椒のような個性が存在価値として求められる。local-localか ら肥大してlocal-globalの領域に至るのが魅力的な話には聞こえない。global-localの領域で輝くビジョナリーな数千社となるか、さ らにそのなかで数社、global-globalの領域へ踏み込む企業が出てくれば、それで十分元気の出るサクセスストーリーであり、日本のソフト産業の 安泰を意味すると考える。

バケツのようなサントス

アスクルさんのバーゲンで、前からすごく欲しかったbodum社の電動サイフォン「サントス」が¥5kだったので、衝動買いした。この価格ならミニ サントスと思ってたら、フルスケールのサントス、最少でも6杯分から。少なめの水で実験すると、しっかり誤動作して、一度上がった水が一度下がってまた上 がる。2度煮るから妙な味わい。あきらめて6杯分を作るが、これはさしずめバケツのよう。掃除も毎回大変。だが、確かに、ペーパーフィルターを使うコー ヒーメーカーとは顕著な風味の差を感じる。

さて、ブログの置き場所を、楽天→ライブドア→ココログ、と変えて来ました。楽天では購買履歴が付きまとうのを回避できず、ライブドアではちょうど トラブル頻発期と重なって心身ともに消耗し、結局、お金を払ってでも安定して高い機能を提供してくれることがわたくしには最優先とわかりました。過去ログ は放棄します。本日より、茅ヶ崎駅前海近くから情報発信するブログ、「猫型飛行船」を始めます。猫型は作者の商売の商号に関係し、飛行船は作者の体型とス ローな生き方に発想の源を置きます。以後、お見知り置き下さい。

2005年に予想したとおり、受託という名の下請けソフト開発の仕事は見事に根こそぎ中国やインドに流出し、壊滅したとまでは言わないが、業界はその姿を大きく変えた。ネットの向こうに価値が移行する、今風に言えばクラウド化はやはり顕著に進展し、ウェブサービスは百花繚乱となったが、WebServicesという技術は期待通りとはゆかなかった。そして、パソコン業界が右肩下がりという状況は予想さえしていない。なぜなら、そのきっかけとなったiPhoneがまだ影も形もなかったから。これはAppleとスティーブジョブスが起こした奇跡だったのだ、やっぱり。

2013年の今となっても、顔色は優れないながらも、この業界の端っこのほうにぶらさがっていられるというのは、感謝しなくてはならない。天に、ということももちろんだが、周囲の方々に、心より感謝したい心境になってくるのは、この2005年のタイムカプセルのおかげなのである。